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【実例紹介】敷金が全額返還される理由|退去時に戻ってこないなら敷金返還訴訟をしよう

これまで住んでいた賃貸住宅から退去するとき、もめることになることが多いのが「敷金」です。

皆さんも、転居の際に戻ってくる敷金が少なかったり、何かと理由をつけて全く戻ってこなかった経験があるのではないでしょうか。

私は小さいころからいろんな環境に住んでみたい!と考えていて、大学生で一人暮らしを始めてから少なくとも2年に1度は引っ越しをしてきたので、今までに8回引っ越しを経験しましたが、8回とも大家さんから提示された返還される敷金は、収めた額の半額以下でした。

内、5回は収めた敷金ありきでほぼ全額返さない見積もりが出てきました。

皆さんの中には、大家さんに言われるがままに支払っている方がいらっしゃるのではないでしょうか?

結論から言うと、こちらに過失がない限り敷金は基本的には全額返ってきます。

契約書に「ハウスクリーニング費用」を支払うって書いているけど、、、
関係ありません、払う必要は一切ありません。

こう断言できるのは、法的根拠と私の実体験からです。

今回は、なぜ敷金を返還していなくていい法的根拠と、敷金が大幅な天引きがあった際にどのように対処すればいいのか私の実体験を交えて解説していきます。

敷金が全額返ってくる理由

一言で言うと、裁判で判例がでているためです。

敷金返還訴訟の過去の判例において、借り主(家を借りている私たち)がほぼ100%勝っており、大家の訴えが認められることはありません。

akira

勘違いされている方も多いのですが、敷金が差し引かれることが例外であり、全額返ってくることが基本です。

国民生活センターに掲載されている判例を2件ご紹介します。

事例1)敷金返還請求(消費者法ニュース32号80頁)

■概要

借り主は賃貸で71,000円/月で契約し、敷金として2ヶ月分の142,000円を大家に預けていました。

2年8ヶ月後に賃貸契約が終了したため、借りていた物件を引き渡しましたが、この際に大家は借り主にリフォーム代金として122,320円を請求したことから、借り主は不服として敷金を全額返金するよう大家に求めました。

■リフォーム代金内訳

・ハウスクリーニング代:30,000円
・ガスコンロのクリーニング代:4,000円
・畳張替え費用:22,500円
・クロス張り替え費用:54,750円
・クロスクリーニング費用:7,500円
・消費税3,562円

合計122,320円

■明け渡した部屋の状態

借り主の故意・過失による大きな損傷もないが、契約書にはハウスクリーニング代を支払うことが明記されていた。

■判決

借り主の訴えはすべて認められ、敷金の全額142,000円が返金される。

■判決理由

借り主は、妻と2人で、居住していましたが、「2人ともたばこは吸わず、退去するまでに賃料は未払いや公共料金の未払い等はなく、退去する際には、普通に掃除をして退去をしていた。
ガスコンロについても借り主が、通常利用の範囲を逸脱するような使用方法で発生させた毀損個所を認めることはできないこと。

これらの事実は客観的にも認定でき、社会通念上通常の方法により使用されたものと認められ、自然もしくは通例的に生ずる損耗以上のものは認められない。

以上より大家が主張する修繕費は借り主に求める合理的な根拠はなく、敷金全額を借り主に返還すべきである。

事例2)敷金返還請求(消費者法ニュース32号81頁)

■概要

大家と借り主の間で結ばれた契約書には、修繕費およびハウスクリーニング代は借り主負担と特約に明記されていた。

借り主は敷金として、310,000円を支払っていたが、特約を理由に30,000円のみしか退去時に返還されなかったことを不服として敷金全額の返還を請求した。

■判決

借り主の訴えはすべて認められ、敷金の全額310,000円が返金される。

■判決理由

建物は時の経過により自然摩耗してい

くことが避けられず、大家はこれを考慮し賃料を得るものである。

建物の賃貸開始時まで遡り、賃貸開始時の状態に復帰させることを要求することは、当事者の公平性を失っていると判断できる。

以上より、特約は借り主の故意・過失に基づく建物の損傷や、通常でない使用方法による劣化などについてのみ、その回復を義務付けたものと考えるのが妥当である。

契約書に記載されているハウスクリーニング代

よくこの話をすると、借り主、大家、双方が納得した上で、契約書を作成しており、契約書に敷金の一部を賃貸物件の補修代(ハウスクリーニング費用、退去負担金などと契約書に記載されることが多いです。)に当てることが記載されているので、ハウスクリーニング代は払わないといけないと解説しているサイトを見かけますが、払う必要がないと判例でているため記載されている内容無効となります。

契約書は、日本の法律や判例に基づいて作成されることが前提です。

上記で紹介した「事例2)敷金返還請求(消費者法ニュース32号81頁)」をご覧いただくとわかるとおり、特約は判例によると、借り主の故意・過失に基づく建物の損傷や、通常でない使用方法による劣化などについてのみ、その回復を義務付けたものあるため、基本的には支払う必要は一切ありません。

akira

どのような場合でもハウスクリーニング費用を支払わなくてよいと言っているわけではありません。そこに「故意・過失」がなかった場合は、支払わなくてよいとされていることに注意してください。

国土交通省のガイドライン

敷金に関しては、トラブルが多いことから国土交通省が敷金についての考え方をまとめたガイドラインを公開しています。

これを根拠に敷金返還を渋る悪徳業者がいますが、借り主がこれを十分理解していないことをいいことに、あれやこれやと違法に敷金を減額してくることがありますので注意しましょう。

 

上図は国土交通省のガイドラインの抜粋です。
「賃借人負担部分」は借り主が負担しましょうということが記載されているのですが、借り主が負担するのは「注意義務違反」、「故意・過失」の場合のみです。

つまり、悪徳業者が自然損耗の一部を借り主に負担を求めるのは、違法ですので、支払う必要はありません。

敷金返還訴訟を行う

判例が出ており、負けるはずのない勝負なのですが、相手もプロです。
なんだかんだと言いくるめられて、敷金を減額せざる得ないような状況に追い込まれそうになることもあるかと思います。

その際は、敷金返還訴訟を行いましょう。

簡易裁判所での審理なので、基本は弁護士を雇わない本人訴訟です。
訴訟と聞くと難しそうに思うのですが、書類を書くだけですので簡単です。また、書類は簡易裁判所に提出するのですが、提出前に必ず書記官が内容をチェックして優しく教えてくれるので、心配する必要はありません。

切手代など経費はかかりますが、私が敷金返還訴訟を行った際は、1万円程度でした。

1万円費用がかかってしまうのですが、負ける理由がない裁判なので、払い損には絶対にならないため、必要経費として目をつぶりましょう。

敷金返還訴訟の実施方法については以下を参考にしてください。

【2024年版】敷金返還訴訟の方法・手順|内容証明作成から簡易裁判所提訴編

敷金返還訴訟の経験談

私は敷金返還訴訟を3回経験していますが、実は3回とも簡易裁判所に書類を提出した後、相手が折れて、敷金を全額返還されたため、実は裁判までもつれ込んだことはありません。

敷金返還訴訟1回目

1回目は、契約書に記載されているハウスクリーニング代29,000円とクロス張替え代の一部16,000円、エアコンクリーニング代20,000円の計65,000円を請求されました。
ハウスクリーニングとエアコンクリーニングは契約書に記載されていたのですが、すでに解説したとおり払う必要がないことを説明しました。ですが、相手は大手のサラリーマン社員です。
マニュアル通りの回答しかなく、埒が明かなかったため敷金返還訴訟を起こすべく、簡易裁判所に駆け込みました。

その後、相手の顧問弁護士から電話がかかってきました。
内容はハウスクリーニングの29,000円だけ払っていただければ、裁判まで持ち込まないとのことでした。
私は前述したとおり、裁判に負けることはないことを知っていたので、向こうの条件をのむ理由がありません。(既に切手代などで1万円かかってしまっていますし、、、笑)

断ると、地方裁判所に移管しましょうと脅しをかけられました。地方裁判所に移管されても必ず弁護士をたてないといけないこともないのですが、こちらの手続きのハードルが一気に上がります。
ですが、それは相手も同じこと。ハウスクリーニング代の29,000円のために、地方裁判所で裁判なんかしたら、弁護士費用で29,000円なんて一瞬で吹っ飛び、相手は無駄に時間と費用をかけることになります。

初めから敷金を全額返すしか選択肢はないのです。

ということで、こちらが訴訟を取り下げないと貫いたところ、翌月に敷金全額返ってきました。

敷金返還訴訟2回目

2回目も1回目と同様、ハウスクリーニング代35,000円、畳の張替え費用50,000円、クロスの張替え費用の一部8,000円の93,000円を請求されました。

この物件は1年程度しか住んでいないのに、畳を全部張り替えるようで、全額負担を求めてきました。この業界は本当に借り主の無知をいいことに、やりたい放題していることを実感しました。

1回目と同様に支払う必要がないことを説明しましたが、契約書に記載があることを理由に話が進展しませんでした。
このときに、敷金返還訴訟を行うことを相手に告げたのですが、訴えた時点で、契約書に記載されていること(ハウスクリーニング代、畳の張替え費用を支払うこと)が有効かどうかは、貸主や私が決めるのではなく、裁判所が決めることになるのですが、理解いただけないようでしたので、簡易裁判所に駆け込みました。

すると、直接大家から連絡があり、敷金が翌日に全額返ってきました。

敷金返還訴訟3回目

この3回目の実例を元に敷金返還訴訟の記事を書きましたので、以下を参考にしてください。

【2024年版】敷金返還訴訟の方法・手順|内容証明作成から簡易裁判所提訴編

敷金返還に関する注意点

敷金は全額返ってくると解説していますが、その大前提としてこちらに過失がないことです。

例えば、私も敷金から退去時に一部支払ったことがあります。

紛失

入居時には洗濯機と配管をつなぐ、プラスチックのL型プラグが付いていたのですが、私が使用しているドラム式の洗濯機と接続ができなかっため、外して洗濯機と配管を繋いでいました。
退去時にそのプラグをなくしていることが判明したため、L型プラグ代580円は敷金から引かれました。
これは、こちらがなくしたという過失に基づくものなので、敷金から引かれても文句は言えません。

過失

私が昔、住んでいた物件は、トイレの上にものを置くスペースがなかったため、突っ張り棒をつけて、トイレットペーパを置いていました。
退去する際に、突っ張り棒が原因と思われる凹みができてしまい、この修繕費8,000円を敷金から支払いました。

敷金返還訴訟の判例を見ると、こういった借り主の過失に基づくものは敷金から減額してよいと判例があるため、素直に支払いましょう。

ただ、勘違いしていただきたくないのは、敷金返還訴訟で返ってきたクロス代のように、ものを擦ってクロスに軽いキズをつけてしまっう程度では、自然損耗の範囲ですので、クロス代を負担する必要はありません。
これも、解説サイトにより減価償却分を考慮してクロス代の一部を負担するなどと、もっともらしく書いているのですが、惑わされてはいけません。
生活していれば、軽いこすり傷などつくのが当たり前です。自然損耗です。
過失となるのは、画鋲で穴を開けたり、クレヨンで落書きしたり、こちらが故意、または意図してできるキズです。

まとめ

敷金について話をすると皆さん泣き寝入りをしているケースが多いように思います。
敷金については、全額返還されることが前提で、借り主の過失に基づくものだけ減額されることが基本です。

ただし、「更新料」については全額支払わなくてはいけないので、ご注意ください。

賃貸の更新料は支払わないといけない理由|裁判の判例を基に解説

本来、ここに書いていることは借り主は知らなくてもいいはずです。
それを借り主が知らないことをいいことに、返すのを渋る大家がいることを悲しく思います。

このような業界を変えるのは、皆さんがしっかり敷金を全額返してもらうことです。
敷金が全額返ってくることが当たり前になることを私は切に願っています。

実際に簡易裁判を行う場合は、以下の記事を参考にしてください。

【2024年版】敷金返還訴訟の方法・手順|内容証明作成から簡易裁判所提訴編

こういったトラブルに巻き込まれないためにも、以下のようなアプリを使用してしっかり賃貸を比較するようにしましょう。

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